ディズニー「美女と野獣」「塔の上のラプンツェル」がスゴイ!

以前インスタにも投稿した実写版「美女と野獣」がスゴイ!という話と、「塔の上のラプンツェル」及び後日譚の「ラプンツェル・ザ・シリーズ」がスゴイ!という話を日記にまとめようと思います。

 

美女と野獣

呪いによって醜い野獣の姿に変えられた王様が、ベルという女性に「真に愛される」ことによって呪いが解けて人間の姿に戻るお話。

 

「人を外見で判断してはいけません」という定番の題材ですが、ルッキズムへのアンチテーゼが大きなテーマとも言えます。「有害な男らしさ」も重要なキーワードです。

 

ぜひアニメ版と実写版両方とも観てほしいのですが、実写版では野獣の姿に変えられる前の王様に言及しました。

 

「子供の頃母上が亡くなって、無慈悲な父上が優しかった坊っちゃまを…あのようにお育てに」というポット夫人のセリフが追加され、王様の設定が掘り下げられました。

 

「有害な男らしさ」を身につけなければ生きていけない環境に置かれていた野獣もまた家父長制の被害者だった、ということです。

 

「呪い」という言葉の意味も変わってきます。野獣に変えられる以前に「男らしさの呪い」がかけられていたということです。"野獣の姿"それ自体が「有害な男らしさ」に基づく加害性の象徴と見ることもできます。

 

また、実写版で追加された野獣のソロ曲「Evermore」が素晴らしいです。この曲によって野獣の内面の美しさやガストンとの対称性が強調されるのです。

ベルについては、92年のアニメ版の時点でディズニープリンセスとしては革新的なキャラクターだったと思います。

 

「女がそんなに本を読んでどうするんだ」と男から茶化されても耳を貸さない、王子様との出会いに憧れていないどころか誰かと結婚しようという気すらない。

 

まぁ最終的には結婚するし、直接危害を加えられたわけではないとはいえ、あんな状況でよく野獣を好きになれるよな、、とは思うものの、「呪いを解く鍵になるかもしれない女」という扱いから、「共に文学を楽しむ対等な人間」として接するように変わる過程がちゃんと描かれてるので、ベルが主体的に結婚を選んだことにも説得力があると思います。

アニメ版のこのシーンにベルの人となりが凝縮されていて、とてもお気に入り

 

なので、この映画の悪役であるガストンが「有害な男らしさ」を煮詰めたような人物なのは作品として筋が通っていて良いです。

 

このあたりは実写版でガストンの毒気がごっそり減った感じがするので、ぜひアニメ版も観てください。

 

アニメ版だとガストンが「本を読んで賢くなると女は不幸になる」とベルに言い放つシーンがありますが、野獣と対極の存在であることがよく表れていて良いですね。

 

美女と野獣」は、

  • 家父長制によって男らしさの呪いがかけられ自尊心を失った男
  • 知識を身につけて男社会をサバイブする女
  • マッチョイズムの権化のような男

の三角関係となっているところがスゴイと思いました。

 

塔の上のラプンツェル

傷を癒す魔法の髪を目当てに誘拐され、18年間塔に閉じ込められて育てられた王女が、自分の出自を知って王国へ帰還するまでを描いた映画「塔の上のラプンツェル」。ラプンツェルが魔法のルーツを辿る旅に出て、太古の悪魔との戦いに身を投じていくTVシリーズラプンツェル・ザ・シリーズ」。

 

画期的な新時代のプリンセス像を確立した作品だと思います。武闘派のプリンセスで、王子様ポジションのユージーンとは対等に協力し合う関係です。

 

むしろ男性が献身的にサポートする立場に近く、最後も命の危機に陥った王子様をプリンセスが救うという、従来の男女観を逆転させた構図が見られます。

 

ユージーンの人物像はディズニーの女性スタッフが"理想の男性"について徹底的に議論して生み出したものです(通称「ホット・マン会議」😂)。このエピソードも、男性の理想を具現化した女性キャラクターが数多く作られてきた過去に対するカウンターとして面白いです。

 

ラプンツェル・ザ・シリーズ」は各キャラクターを深掘りすることがメインで、3クールもあり正直かなり中だるみしますが、ラプンツェルが好きなら観る価値ありです。

 

ラプンツェル ザ・シリーズを視聴 | Disney+(ディズニープラス)

 

TVシリーズからカサンドラという侍女が新たに登場します。近衛隊長の養子で、ラプンツェルの護衛兼お世話係兼友達という感じで重要なキャラクターです。

 

ラプンツェルにとって初めての同性の友達であり、旅の中でお互いの欠点を知ってぶつかったり、協力して敵を倒したり、親密な関係性が描かれていくのですが、シリーズ終盤に予想外なシーンがありました。

 

ラプンツェルカサンドラに対する感情が恋愛感情であると読み取れる曲とセリフがあるのです。

 

ラプンツェルのソロ曲「I'd Give Anything」は、自身の境遇に対するコンプレックスからラプンツェルたちと敵対することになったカサンドラに対する気持ちを歌った曲です。

決定的な言葉があるわけではないですが、歌詞の節々から、この曲が流れるときの映像表現から、ラプンツェルカサンドラに恋愛感情を抱いていた(あるいはこのとき自分の感情が恋愛感情だと気づいた)と受け取りました。

 

王国から旅立つカサンドラを見送るシーンでは、お互いに「I Love You」と言っています。日本語吹替は「大好きよ」になっていて、また同性愛要素を薄める邦訳か。。。「愛してる」と言わせても良かったのでは。。。と何とも言えない気持ちになりました。

 

が、ラプンツェルバイセクシャルである可能性が示唆されたのは本当にスゴイことで、ラプンツェルのドレスの色(コンセプトカラー)が紫であることにも大きな意味があるような気がしてきます。

 

塔の上のラプンツェル」は、

プリンセスシリーズの様式美を踏襲することと、伝統を打ち破ることを両立しているところがスゴイと思いました。